【M&D Lab.連載コラム01-2】
がん治療を支える薬のお話

第8回 ロイコボリン

(一般名:ホリナートカルシウム)

ロイコボリン(ホリナートカルシウム)は葉酸代謝拮抗薬メソトレキセート(MTX)の解毒剤としてあまりにも有名であったが、その後、フルオロウラシル(5-FU)の抗腫瘍効果を増強させることが見出されてから抗腫瘍薬としての作用にも注目されている。すなわち、本薬自体には抗がん作用はないが、メソトレキサート(MTX)の毒性軽減やフッ化ピリミジン系抗がん薬の作用増強作用がある。本薬はビタミンの一種である葉酸の活性型誘導体である。ロイコボリン(ホリナート)には錠剤(5mg、25mg)と注射用製剤(3mg=1ml)がある。注射薬は静脈内、筋肉内ともに可能である。

小児では主にMTXの副作用を予防する目的に処方される。ロイコボリンは抗がん治療時にMTXによって生じる正常細胞(骨髄の造血細胞など)の細胞増殖抑制をすみやかに回復させ、その副作用を回避する。特に、白血病や悪性リンパ腫、骨肉腫などに対する大量MTX療法時にロイコボリンを併用する方法を「MTX・ロイコボリン救援(救助)療法」と呼んでいる。これはMTX(白血病などでは1回30-100mg/kgを6時間かけて、肉腫では1回100-300mg/kgを6時間かけて)点滴靜注するが、その終了3時間目から1回15mgを3時間間隔で9回靜注し、以後6時間間隔でさらに8回靜注または筋注投与するものである。通常、MTXなどの葉酸代謝拮抗薬の過剰投与に際しては投与された葉酸代謝拮抗薬と同量のロイコボリンが投与できる。但し、MTXの体内からの腎排泄が遅い例ではロイコボリンの増量や投与回数を増やす工夫が必要である。

一方、成人ではロイコボリン(ホリナート)のフッ化ピリミジン系抗がん薬(5FU、テガフールなど)の作用増強に注目して、胃がんや直腸がんなどの治療に多用されている。胃がんではMTX・フルオロウラシル(5-FU、フトフラールなど)交代療法などに際してロイコボリンが投与される。すなわち、MTX投与量は3mg/kgと通常量を靜注後、1-3時間後に5FUを1回600mg/m2(18mg/kg)を靜注または点滴靜注し、その後ロイコボリンを投与するものである。直腸がんにはホリナート・テガフール・ウラシル(UFT/LV)療法がある。テガフール・ウラシル配合薬(ユーエフテイ、UFT)の主成分であるテガフールは5FU誘導体で、肝臓で5FUに変換されてから効果を発揮し、配合成分であるウラシルは5FUが分解されるのを抑える。この効果発現機構の1つは5FUのチミジル酸合成酵素阻害によりチミジン欠乏を生じ,DNA合成が抑制されることにあるが,これにホリナートを併用すると、その光学活性体レボホリナートが5FUのチミジル酸合成酵素阻害をさらに増強する。

UFT/LV療法ではUFTの1日量(テガフール300〜600mg相当量)を1日3回に分けて食事の前後1時間を避けて経口服用させ、同時にホリナートを成人服用量として通常、75mgを1日3回に分けて経口服用させる。これを28日間連日経口服用し、その後7日間休薬する治療を1クールとして服用を繰り返すものである。

ロイコボリン(ホリナート)単独の副作用には重篤なものはないが、過剰のロイコボリン(ホリナート)投与は MTX の抗腫瘍効果を弱めるため、MTX の血中濃度を指標にその投与コントロールすることが望ましい。なお、UFT/LV療法に引き続いて,他のフッ化ピリミジン系抗悪性腫瘍剤あるいは抗真菌剤フルシトシンの投与を行う場合は少なくとも7日以上の間隔をあけるよう注意する必要がある。

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