【M&D Lab.連載コラム01-3】
おとなのがん治療薬のお話

第5回 

オキサリプラチン

一般名:エルプラット、oxaliplatin、Eloxatin

結腸直腸(大腸)がんは、世界におけるがんの主要原因第 3 位、がんによる死因第 4 位を占めている。毎年、世界では約 100 万人が新たに大腸がんと診断されているという。
新規構造を有する白金錯体系抗悪性腫瘍剤である。類薬のシスプラチン(白金錯体系抗悪性腫瘍剤)に耐性となった腫瘍への効果およびシスプラチンに特徴的な腎毒性の軽減を目的として1976年喜谷義徳(名古屋市立大学名誉教授)らによってわが国で見いだされた化合物である。しかし、その開発はスイスのデビオファーム社によった。その作用機序は、投与後、生体内変換体(ジクロロ1,2-ジアミノシクロヘキサン(DACH)白金、モノアクオモノクロロDACH白金、ジアクオDACH白金)を形成し、がん細胞内のDNA鎖と共有結合することでDNA鎖内及び鎖間の両者に白金DNA架橋を形成することによる。これらの架橋がDNAの複製及び転写を阻害する。白金錯体系抗悪性腫瘍剤であるが、シスプラチンと異なり、投与にあたって大量輸液は不要とされている。抗悪性腫瘍剤「エルプラット注射用100mg」(一般名:オキサリプラチン)として2005年4月から国内で発売開始された。本剤は、結腸・直腸がん(大腸がん)に対する世界的な標準治療薬として、すでに数多くの国々で販売されており、日本国内の承認・発売が長く待たれていた。
わが国で承認された効能・効果は治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌に対してであり、用法・用量は(1)本剤1バイアルに5%ブドウ糖注射液20〜50mLを注入して充分に溶解する。溶解液は成人1日量85mg/m2相当量を5%ブドウ糖注射液に注入し、250〜500mLとして、静脈内に2時間で点滴投与する。(2)これをレボホリナート(アイソボリン)及びフルオロウラシル(5−FU)の静脈内持続投与法との併用において使用する。この治療法を少なくとも13日間休薬し、副作用の回復を待って反復投与する。
大腸がんの治療において種々の薬剤と組み合わされるがde Gramont療法では1日量として、アイソボリン(ロイコボリン)を通常成人100mg/m2を2時間点滴静注、この直後にフルオロウラシル(5-FU)を通常成人400mg/m2を急速静注、さらに600mg/m2フルオロウラシルを22時間かけて持続静注する。これを2日間連続投与する。この2日間投与を2週間毎に繰り返すものである。一方、FOLFOX4 (5-FU/ ロイコボリン/ オキサリプラチン)というレジメンの有効性がその後知られ、現在、世界的に大腸がん患者で最もよく用いられている。FOLFOX療法は切除不能・再発大腸癌に対する一次治療の標準的治療と認識されている。FOLFOX4ではオキサリプラチンは 65-85 mg/m2 をDay 1に, ロイコボリンは 200mg/m2, を2時間かけて点滴静注、5-FUは bolusで 400mg/m2, さらに 400-600 mg/m2 を持続点滴で Day1+Day2に投与する。さらに、FOLFOX4にVEGFR阻害薬であるアバスチン(Avastin、bevacizumab)HER1/EGFR阻害薬である Erlotinib (cetuximab,Tarceva)を併用する療法も検討されている。これらの治療で5-FU投与では時間治療、すなわち5-FUを主に夜間にも投与しようという概念が導入されている。これは5-FUは夜間に入れたほうが、効果が高く副作用が少ないからだという。その理由として(1)がん細胞は昼も夜もなく活動しているが、正常細胞は夜にはあまり活動していないのでがん細胞を選択的に叩ける可能性が高いこと、(2)5-FUを代謝する作用も夜間の方が活発なためであるという。なお、海外文献で使用されているロイコボリンは国内承認のアイソボリン(L-型ロイコボリン)と比較して効力は約50%であるので、国内投与のアイソボリン投与量は海外ロイコボリン投与量の50%になる。

副作用には好中球減少、末梢神経障害(指の「しびれ」)など、がある。現在、副作用調査が進行しており、血液系障害、消化器系障害、神経系障害、腎機能障害、心循環器系障害等の有害事象について報告が義務付けられている。


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